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諸法無我 | 三法印のひとつ。仏教の根幹となる教え

仏教には、

諸行無常(しょぎょうむじょう)
・諸法無我(しょほうむが)
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)

という3つの基本の教えがあります。これを三法印といいます。その中のひとつ「諸法無我」は、ひとことで言うと「すべての物事は因縁によって変化するものなので、固定した実体はない。」という教えとなります。

現在の姿はすべて繋がりの結果

因縁(繋がり)によって変化するとは、「世の中のすべてのものごとは互いに影響を与えあってそこに存在する」ということを指しています。たとえば「樹が立っていること」は、当たり前のことではなく、土があって、水があって、養分があって、太陽の光があって、樹が現在の姿にまで育ったのです。「樹が立っている」という現在(結果)は、樹へのさまざまな関わりがあった周囲の環境や時間などがあってこそ。つまり、人でも生き物でも、さまざまな繋がりの結果が現在の姿なのです。ですので、「樹そのものが独立して存在している」とは仏教では考えません。

現在の姿は状況によって常に移り変わる

人は現在の自分の姿にばかり意識がいき、嘆いたり後悔したり、もしくは満足したりします。しかし、諸法無我を正しく理解すれば、それらはどれも意味がないことになります。

仮に現状をよしとしない後悔の念にとらわれていたとしても、新たな繋がり(出会い・環境・時間の経過…)などによってその心情は変化するものです。また、逆に現状に満足していて「いつまでもずっとこのままでいたい」と考えて将来に不安を抱いたりします。しかし、どんなに願ったとしても、時間の経過や新たな出来事などの繋がりによって、現状は必ず変化してしまうものなのです。

つまり、「現在の自分や未来は常に変化していくものであるから、そこに固執したりしがみついたりする必要はない」ということなのです。

執着は心の平穏を乱すもの。そこから迷いが生じてその先の生き方を見失ってしまう人もいるでしょう。しかし、「良くも悪くも人や物ごとは必ず変化する。自分自身も変化する。」ことを受け入れられれば、こころが楽になるはずです。

諸法無我の意識を持って周囲を見まわす

 実際の生活で思い当たることでいえば、悲しいことや苦しいことでしょう。たとえば収入が少なくて生活が苦しかったり、人間関係にひどく悩んでいたり。そんな悩みを持っているときこそこの「諸法無我」を思い起こしてみましょう。「現在の苦しみは永遠に続くのか?」と自分に問いかけてみれば、おそらく多くの場合は、きっかけや新たな繋がりなどがあれば変わるものという答えが出るはずです。

とはいえ、苦しみや悩みを持ち続けるのではなく、その苦しみ・悩みを抱くことになった今までの自分を振り返って、原因となったことをやめたり、他者がその理由であれば、そこから遠ざかることができないかを考えてみましょう。苦しみの渦中にいるとなかなか気づかないものですが「自分自身は周囲の状況によって成り立っているもの」という意識をもって周囲を見まわせば、抜け出すきっかけを見つけることができるでしょう。

絶対的な自分などない。変化を恐れる気持ちをなくす

 一方、現状から変化、とくに悪くなることばかりを考えて不安を抱く人もいます。これも諸法無我の考え方では心の平穏を乱すものです。

「現状の地位や生活から転げ落ちるのではないか」といった不安だけではなく、「誰かに成功を妬まれて貶められるのではないか」「誰かに追い抜かれるのではないか」といった猜疑心もあります。そんな不安や猜疑心を取り払うためにも「物ごとは必ず移り変わる」ということを心に留めておけばよいのです。

将来が良くなるか悪くなるかは誰にもわからないことです。今よりもっと良くなることだってあるでしょう。それなのに悪くなるイメージばかり持ってしまうのは、今までの自分がそう思ってしまうような行動してきた結果かもしれません。自分のこれまでの行動を振り返り、反省すべき・改善すべき点があれば実行しましょう。そういった行動が「新たな繋がり」となってあなたの未来を変化させていくのです。

文・hasunoha編集部
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