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仏像オタクニストSALLiAの「仏のトリセツ」vol.18「ドラマ『MIU404』で描かれた正しさのあり方」

今年の夏。私は「ドラマ」のおかげで乗り切れたと言っても過言ではありません。

その中で、特に毎週心待ちにしていたのが「MIU404」というドラマ。

2018年に放送されたドラマ「アンナチュラル」で脚本家、野木亜紀子さんのファンになった私にとって、今作は非常に期待値の高いドラマでした。

野木さんの脚本は常に「今」という瞬間を逃さず、そして余さず作品に落とし込んでいます。

今作も例に漏れず、新型コロナウィルス感染拡大のため、開始がおよそ三ヶ月遅れとなってしまいましたが、だからこそ、どのドラマよりもいち早くコロナ禍の現状をドラマに反映させ、最初から最後まで素晴らしい物語を見せてくれました。

そしてその物語は、今という時間を生きる人たちのさまざまな「一切皆苦」と、「正しさのあり方」を描いていたように思います。

ドラマ「MIU404」を見ていた方も、見ていない方も、お付き合いいただけましたら幸いです。

誰もが持っている「スイッチ」

最初に公開された情報は、架空の機動捜査隊「4機捜」が、24時間というタイムリミットの中で犯人逮捕に全てをかけた、一話完結の作品で、綾野剛さんと星野源さんがドラマ内でバディ(相棒)を組むということだけでした。

しかし蓋を開けてみると、毎話毎話、頭をゴーンと殴られたかのような衝撃と、思わず考えなければいけないと思わせるだけのメッセージ性のオンパレード。

この作品には、主要メンバーだけではなく、毎回様々な人間が登場します。

自分は間違っていないと思いたい人と、もう間違えたくないと思っている人。

まだ間違えてないからこそ、間違えることが怖いと思っている人。

自分は間違えていると分かりつつも、そうせざるを得なかった人。

劇中では、それを「スイッチ」という言葉で表していました。

主人公の一人である志摩(星野源さん)はピタゴラ装置の前で言います。

「何かのスイッチで道を間違える。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかない人もいる。」と。

誰と出会うか、出会わないかによっても変わってくるし、何がきっかけとなったかはその時が来るまで誰も分からない。

正しくあろうとする者も、そうでない者も、誰もが平等に持ち得ている「スイッチ」。

その「スイッチ」は、まさに私たちに「生きる苦しみ」を実感させるための「スイッチ」とも言えるのではないか?

と話数が進むごとに、私は思えてなりませんでした。

私たちが平等に与えられているのは「時間」と「死」と「生きる苦しみ」です。

特に「生きる苦しみ」に関しては、お釈迦さまは「一切皆苦」という言葉で表しました。

一切皆苦。

この世界は結局、生きるだけで苦しいと思うシステムになっている。

そして、そんなシステムを実感し得るスイッチを押すためのきっかけは、人生の様々な場所でしかけられています。

では、何故私たちにそんな迷惑極まりない「スイッチ」が搭載されているのでしょうか?

間違えたことを認めた先に、出会えるもの

ネタバレになりますが、志摩と伊吹(綾野剛さん)はそれぞれ、「見過ごしたスイッチ」という後悔を抱えています。

志摩は過去に相棒を亡くし、伊吹は恩人の刑事が殺人を犯すことを止められなかったという後悔です。

あのとき声をかけていたら。俺があいつの異変に気づいていたら。

俺は、どこで間違えた?どこなら止められた?

志摩も伊吹も、考えてもどうしようもない「もしも」を考え、知らず知らずのうちに見過ごしたスイッチの存在を嘆き苦しみます。

こうなると分かっていたら、しなかったのに。

そう思うことが人生にはたくさんあります。

でも、それらの後悔や間違いが、物語の中では二人が信頼し、手を取りあって本当の相棒(バディ)になっていくための「伏線」になっていました。

たった一つの些細なきっかけが、誰かのスイッチを押してしまうかもしれない。

世の中には取り返しのつかないことの方が多い。

だからこそ、今度は失わないように。そしてなるべく間違えないように。

二人は、警察でしたが決して「正しくあろうとすること」に対しての執着はなかったように思います。

間違えないように、というのは決して正しくあろうとすることではなく、「取り返しがつかなくなる前に、手を差し伸べる」という姿勢だったと私は感じました。

それは二人が一度「見過ごしたスイッチによって、取り返しがつかない後悔」を経験したからこそ、知り得た「姿勢」だったと思います。

自分は正しかったのか?間違っていたのか?と考えても、起こってしまったことは変えられないし、亡くなった人も戻ってこないならば、やはり苦しいだけです。

だけど正しくあろうとすると、きっとまた間違える。

なぜなら、100人いれば100人分の正しさがあるからです。

それなら、自分は間違えたんだと知り、それを受け入れること。

そうすることで次、間違えることを回避することできる。

「正しさ」を目指すことではなく、「間違いを回避すること」を目指す。

もしかしたら、結果的にそれが本当の「正しさ」と言えるのかもしれない。そう思いました。

「スイッチ」は確かに、私たちに「生きる苦しみ」を実感させるものかもしれない。

だけれどそのスイッチを押し、「ちゃんと間違えた」二人だからこそ、出会える存在と強さが確かにありました。

正しくあろうとすること自体が、そもそも間違い

最近は、正しくあろうとする人が増えた気がします。

でもその正しさが、時に人を追い詰める…。

それを知っている人は、少ないように感じます。

MIU404では、フェイクニュースの拡散や、SNSでの誹謗中傷にもスポットを当てていました。

偽りも、大多数によって正義になってしまうこと。

何も悪いことをしていない人が、誰かの悪意で多数の悪意の標的になること。

自分が正しいと思って行ったことが、誰かのスイッチを押してしまうかもしれない。

正しくあろうとすることも、また「執着」であり、「間違い」なのです。

だからこそ私たちには、簡単に間違えてしまえる「スイッチ」が搭載されているのでしょう。

目の前に間違っている人がもし、いたら。

私は間違えないから責めてもいいなんて、決して思ってはいけない。

だって、私も何かのきっかけで間違えてしまうかもしれないから。

今回は、たまたま目の前の人が間違えたけれど、もしかしたら私が間違えていたかもしれない。

だからこそ、精一杯手を差し出すべきなんだ。

と親鸞聖人の思想の一つである「悪人正機」のなんたるかが、ほんの少しだけMIU404を通して理解できた気がしました。

私たちに搭載されているそのスイッチは、そんな「仏的視点の許し」に気づかせるためにもしかしたら搭載されているのかもしません。

だって、間違えない人はこの世に一人もいないのですから。

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文・hasunoha編集部
SALLiA(サリア)

歌手、音楽家(作詞・作曲・編曲家・音楽プロデューサー)、仏像オタクニスト 。

「歌って作って踊る」というスタイルで話題を呼び、2016年11月USEN1位を獲得。さらに4週連続トップ10入りを果たした。さらに音楽家(作詞・作曲・編曲家)として楽曲提供を行ったり、県域ラジオ局のラジオパーソナリティ、全国のフリースクールでのボランティア活動等、その活動は多岐に渡る。

幼少期よりいじめ、不登校、家庭内の不和など、様々な生きる苦しみを感じながら成長し、20歳で「仏像」と出会う。そこからずっと感じていた「どんなに過酷な状況でも穏やかに、幸せに生きる方法」を本格的に模索し始める。

そしてUSEN1位獲得の翌年、足の事故に遭うという人生最大の危機が訪れる。しかしその人生最大の苦しみがきっかけとなり、仏像だけでなく本格的に「仏教」の勉強をし、「自分で自分を救っていく方法」を発信する「仏像オタクニスト」としての活動を始めることを決意。2018年4月、本名の畑田紗李から「SALLiA」に改名。

2018年12月3日、「生きるのが苦しいなら~仏像と 生きた3285日~」を出版。紀伊国屋週間総合ランキング3位やダ・ヴィンチニュース1位など、話題を呼んでいる。

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