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仏像オタクニストSALLiAの「仏のトリセツ」vol.20 許しはあなたを救うかもしれない

早いもので、2020年も終わりを告げようとしています。2020年という年は、皆さんにとってどんな一年だったでしょうか?

理不尽だと感じる出来事もたくさんあったかと思います。

許せないと感じる人の言葉や行動も、もしかしたらあったかもしれません。

かくいう私にも、許すべきではない、と思うような出来事がたくさんありました。だからこそ、2020年を締めくくる今回のコラムは「許し」をテーマに書きたいと思います。

「許せない」という気持ちの正体

特にコロナ禍になってから、ストレスの行き場がなくて、その矛先を他者に向けてしまうという出来事や増えたように感じます。

では、人や出来事を許せないと思う理由は、一体どんな感情から生まれるのでしょうか?

法律上や道徳上であり得ないから、許すべきではない。

自分や大切な人が傷つけられたことが、許せない。

許せない、という感情は大体この2パターンにカテゴライズできると私は考えます。

過去の私は、許せないと思うものがたくさんありました。自分に正しさを求めれば求めるほど、自分以外にも同じものを求めては、疲弊し、勝手に傷ついていました。

それに疲れたある日、私は考えてみたのです。

自分の「許せない」という思いの原点はどこにあるのか、を。

その正体は「自分のことを正しいと思っている傲慢さ」と「自分の思っていることと違うことが返ってきたことに対する怒り」でした。

傲慢は、キリスト教では七つの大罪の一つですし、儒教では疎まれ、仏教でも戒めるべきものとして「七慢」の中に入っています。

怒りは言うまでもなく、煩悩の中でも扱いの難しい「三毒」のひとつです。

自分は正しい。だからそれを他者へ強いてもいい。でも自分の思うべきリアクションが返ってこなくて腹が立つ。そして「なんで私がこんな目に…」という愚かな自己憐憫を自らが生み出している。

それが「許せない」という気持ちの正体でした。

許せないという感情は、心を疲弊させます。許せないという気持ちを持つことに、いつしか私は疲れ果て、解決方法を探りました。

過ちを犯した人と、同じ人間であると認めること。

そもそも私は、他者に「正しさ」を求められるほど、正しい人間なのか?

そんなつもりがなくても、言った言葉で人を傷つけてしまったことだってある。道理が分からなくて、人に迷惑をかけたこともある。

自分が正しいと思ってしたことは、人にとって正しくなかったこともある。

人の過ちを指摘できるほど、私は立派な人間なのだろうか?

そしてある日、私はお釈迦さんのとある言葉に出逢います。

「人生の道理を正しく知っている人に怒りはない。怒りに支配されるな。 怒った人に対して怒りを返す人は、それによって悪をなすことになるのである。善いことによって悪いことに勝て。分かち合うことによって貪悋(とんりん)に勝て。」

他者へ向ける「正しさ」は決して免罪符になりません。正しさはただひたすら、自分にのみ向け、追及すべきものだと私は気づきました。

自分も正しくは生きられない。気づかないうちに、過ちだって犯すでしょう。だからこそ、過ちを犯した人に「共感」できる部分も必ずあるはずだと思いました。

自分が正しいという視点だけでは気づけなかったことです。許せない相手に対して、自分は絶対にそんな過ちは犯さないと思っているうちは、決して「許し」は得られず、「怒り」や「傲慢」を手放すことはできません。

今はそんな過ちは犯してなくても、もしかしたら自分だって同じ過ちを犯してしまうかもしれない。だって同じ人間なのですから。

物事には必ず原因があります。その人が自分にとって「許せないという行いをした」ということには必ず、原因があるでしょう。その原因が分からず、共感するチャンスもないからこそ、納得できないまま苦しいということが相応にしてあります。

でも、許せないことをした人と自分は違うと思っているといつまでも苦しいです。

だから、憎むのならばその「罪」自体を憎む。

それが自分の心を苦しみから解放するための「許し」のトリガーとなりました。

仏教は常に、自己との対峙であり対話であり、そこが最大の魅力であるとも私は思っています。

どうしてこんな目に…と思うようなこともありましたが、理解できない人を理解することは自分の世界を拡げるということにも繋がります。

なかなか自分から嫌な思いってしにいけないですからね。

2020年後半。なかなかしんどかったですが、得るものがたくさんありました。

来年はどんな一年になるでしょうか?

怖くもあり、楽しみでもあります。


それではみなさん、良いお年を!


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文・hasunoha編集部
SALLiA(サリア)

歌手、音楽家(作詞・作曲・編曲家・音楽プロデューサー)、仏像オタクニスト 。

「歌って作って踊る」というスタイルで話題を呼び、2016年11月USEN1位を獲得。さらに4週連続トップ10入りを果たした。さらに音楽家(作詞・作曲・編曲家)として楽曲提供を行ったり、県域ラジオ局のラジオパーソナリティ、全国のフリースクールでのボランティア活動等、その活動は多岐に渡る。

幼少期よりいじめ、不登校、家庭内の不和など、様々な生きる苦しみを感じながら成長し、20歳で「仏像」と出会う。そこからずっと感じていた「どんなに過酷な状況でも穏やかに、幸せに生きる方法」を本格的に模索し始める。

そしてUSEN1位獲得の翌年、足の事故に遭うという人生最大の危機が訪れる。しかしその人生最大の苦しみがきっかけとなり、仏像だけでなく本格的に「仏教」の勉強をし、「自分で自分を救っていく方法」を発信する「仏像オタクニスト」としての活動を始めることを決意。2018年4月、本名の畑田紗李から「SALLiA」に改名。

2018年12月3日、「生きるのが苦しいなら~仏像と 生きた3285日~」を出版。紀伊国屋週間総合ランキング3位やダ・ヴィンチニュース1位など、話題を呼んでいる。

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