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仏像オタクニストSALLiAの「仏のトリセツ」vol.4 インディゲームで気づく、アンガーマネジメント

(トップ画像は、Getting Over Itより引用)


前回の内容があまりに重かったので、今回は割と箸休め回です。最近、巷で流行りに流行ったインディゲームがあります。その名も「Getting Over It」。ツボに入ったムキムキの男性がハンマーだけで崖やら障害物やらを乗り越えて、上を目指すという、シュールなゲームです。

全世界に、最高のイライラを提供しているこのゲーム。数々のゲーム実況者を泣かせてきた、恐ろしいゲームでもあります。

不平不満が主食期を経て

比較的、温厚に見られる私なのですが、そんな私がずーっとイライラ、カリカリしていた時期がありました。とにかく目に映るもの、耳に入るもの、五感の全てで触れる全てが気に入らない!!!不平不満が、主食です。みたいな日々を送っていたのです。

でも当然、私はそんな自分が嫌いでしたし、どうにかしたいとも思っていました。

当然、そんな時期の私が「Getting Over It」をプレイしていたら、きっとiPhoneをぶん投げていたでしょう。そりゃもう、iPhoneの画面がバキバキになるぐらいに。

だけど今、どれだけイライラするんだろ…といざプレイしてみると、それが全くイライラしない。

自分の中の怒りの捉え方が180度変わったことを、改めて私は謎のシュールなゲームによって思い知ったのです。

怒りはリアルに毒。

怒りに気づいたら呑み込まれている。怒り狂って、その熱が冷めてしばらく経ってから、私はやっと自分の怒りに気づくことができる。ずっとその繰り返しでした。

世の中に出回っていたアンガーマネジメントの本や、記事も読み漁るけれど、どうにもならない。怒りを自覚したら深呼吸するとか、6秒間落ち着いてみるとか、んもうとにかく無理ー!!!そもそも怒りを自覚したり、落ち着いたりができてたら、怒りもしないよー!!!

元々、性格自体は大らかな方だったのに…どうしてこうなったんだー!!!!!と、それすらも怒りの元にしてしまっていたのでした。

そして足の事故に遭ったあとから、私は本当のアンガーマネジメントを始めなければならなくなったのです。というのも、太ももの皮下の火傷という特殊な事故だったので、科学的根拠があるかは分からないのですが、とにかく怒ると、急激に足が痛む。

仏教で、煩悩のベースとされている「三毒」というものがあります。「貪欲(とんよく)」「瞋恚(しんい)」「愚痴(ぐち)」。わかりやすく言い換えると「執着心」「怒り」「物事を正しく判断できないこと」です。

まさに怒りは毒である。というのを、私は身を以て実感したので、これはもうどうにかしないといけない。そう思い、自分の怒りのメカニズムを探ることを始めたのです。

怒りをコントロールするのは無理。それならば…?

突然ですが、雑草って抜いても抜いても生えてきますよね。完全に生えないようにするには、

1.太陽光に当てない・・・光合成できない環境にすれば生えない

2.土を覆う・・・根が付かなければ生えない

3.他の植物で覆う・・・植物のチカラで制す

と、とにかく元を断つか、上から蓋をするかのどちらかのようです。怒りもそれと同じだと私は思っています。

生えてくるものを、無くすことは難しい。ましてや、生え方をコントロールすることはもっと難しい。なので、まずは「怒りをコントロールするのは無理」と開き直るところから始めました。

そしてその次は、「自分が怒っていることを瞬時に自覚する練習」を開始しました。それは同時に、「自分を我に返すこと」にも繋がります。それが出来たら、次はこれらの問いを自分にしました。

・何故、腹を立てたのか
・本当に、腹を立てるべきことなのか?
・腹を立てた先に、何があるのか。自分はどうなるのか。
・そもそも、それは本当に「怒り」なのか?

という4つの質問です。

それを繰り返している内に、自分の怒りにはパターンがあることが分かってきました。

怒りは自分の勝手で生まれる。

まず、私には「こうなってもらわないと困る」というものが多すぎました。要は、その数だけ「怒り」や「不満」の元になるということです。自分が望む通りになった時はいいけれど、そうならなかったら?

そうです。怒るしか無くなるのです。執着心が怒りを生むパターンですね。ならば、別に「そうならないと困るもの」を作らないようにするだけです。

そして二つ目は、気に入らない相手に、気に入らないことを言われたり、されたりした時にやはり人は怒ります。

怒りのプロセスを探ることで、自分が一体何が気に入らないことを知ることができました。でも、たとえ気に入らない言葉でも、それは元々はただの「言葉」。

さらにはその人が好きか嫌いかを決めているのは、単なる自分の「認識」に過ぎないわけです。

そのカラクリが腑に落ちてからは、なーんだ、じゃあ怒る必要ないじゃーん。自分の認識で勝手に怒ってただけじゃーん。と途端に怒ることがアホくさくなったのです。

まあ大体、蓋を開いてみたら、なんだこんなことか…。ということなのですが、それを心で理解するのは結構難しい。でも一度体感すれば、こっちのもんです。

座りたいと思った電車の席に、さっと誰かが座ってしまった時。なんだよ…座ろうと思ってたのに、ってつい思ってしまうんですよね。でも、そんな時私はこう思うようにしています。

「ただ、目の前の席が埋まっただけ」

と。こう考えるパターンを作ってからは、怒りに呑み込まれたことは今の所ありません。処理に困る怒り案件も中にはありますが、大体上のどちらかのパターンに当てはまります。

雑草と同じように、元を断つ。パターンを持って、蓋をする。

落ちるのが分かっているからこそ、Getting Over Itは面白い。いいところまで行ったのに、ほんの少しの操作ミスで落ちるから、面白い。

認識を変えるだけで、同じものの受け取り方が180度変わります。本当に認識って面白い。アンガーマネジメントのお供に、Getting Over It いかがでしょう?生産性のないゲームではありますが(笑)

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文・hasunoha編集部
SALLiA(サリア)

歌手、音楽家(作詞・作曲・編曲家・音楽プロデューサー)、仏像オタクニスト 。

「歌って作って踊る」というスタイルで話題を呼び、2016年11月USEN1位を獲得。さらに4週連続トップ10入りを果たした。さらに音楽家(作詞・作曲・編曲家)として楽曲提供を行ったり、県域ラジオ局のラジオパーソナリティ、全国のフリースクールでのボランティア活動等、その活動は多岐に渡る。

幼少期よりいじめ、不登校、家庭内の不和など、様々な生きる苦しみを感じながら成長し、20歳で「仏像」と出会う。そこからずっと感じていた「どんなに過酷な状況でも穏やかに、幸せに生きる方法」を本格的に模索し始める。

そしてUSEN1位獲得の翌年、足の事故に遭うという人生最大の危機が訪れる。しかしその人生最大の苦しみがきっかけとなり、仏像だけでなく本格的に「仏教」の勉強をし、「自分で自分を救っていく方法」を発信する「仏像オタクニスト」としての活動を始めることを決意。2018年4月、本名の畑田紗李から「SALLiA」に改名。

2018年12月3日、「生きるのが苦しいなら~仏像と 生きた3285日~」を出版。紀伊国屋週間総合ランキング3位やダ・ヴィンチニュース1位など、話題を呼んでいる。

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