煩悩とは苦の根源
今回のテーマは、人間の苦の原因とされる煩悩(ぼんのう)です。質問者のalexさん(30代男性)より「Wikipediaに書いてあることがむずかしい、わかりやすく簡単に教えてほしい」と意見をいただきましたので、さっそく煩悩についてお坊さん方に聞いてみましょう。
煩悩は「苦」の根源です
なぜ苦しむのか。煩悩によって真実が見えなくなっているからです。ものの見方が狂っているからです。わたしたちが、移り変わる物を永遠と信じ、欲を満たすことを幸せと考え、ありもしない「私」に執着をするからです。
(中略)
私たちを煩わせ、悩ませ、苦しめる不善のはたらき。それが煩悩です。
煩悩とは、欲望や執着、怒りや妬みなどによって生まれる苦しみのこと。こちらのお坊さんは、仏教の目的は、その「苦」を消滅し、最終的に苦しみのない悟りの境地、涅槃(ねはん)にたどり着くことが目的であると教えてくださいました。
「煩悩=悪」ではありません
誤解してはいけないのは、「煩悩=悪」という考え方です。
煩悩がなければ、科学や社会の発展も、人類の存続もありません。人間にとって不可欠なものでもあると思います。
本能、欲求の中には、食べる、寝るなどの生理的な欲求、愛されたいなどの承認の欲求、なりたい自分を目指す自己実現の欲求などもありますが、これらもすべてが煩悩。
こちらのお坊さんがおっしゃるように、人間に煩悩があるからこそ世の中は発展してきました。煩悩をエネルギーにかえて、よい方向へ活かしてあげることができれば、煩悩は決して悪ではないかもしれません。
湧き起こる煩悩を認める
一つは、煩悩を消し去ること。もう一つは、煩悩が湧き起こることを認め、我が身の真実であるととらえること。浄土真宗では、後者のように煩悩に向かいます。
執着にとらわれてしまうと、心が波立つ、つまりそれが煩悩ですと教えてくださったこちらのお坊さん。浄土真宗では、消し去ろうとしても次々湧き起こる煩悩を認めてあげること、それを救うのが阿弥陀様の力であるとおっしゃっています。
煩悩とは、物事をわたくし化した時に現れる心のバイキンマン
世界はもともと誰のものでもありません。
あなたが生まれる前から宇宙や地球、世界はずっと人間の意思、思惑、欲望とは無関係に働き続けています。
人間だけはそれを「わたくし視線」で良い悪いを起こてしまいます。
傲慢さや優越感といった心も煩悩の1つです。それゆえに、心が苦しくなります。こちらのお坊さんは、心を苦しませる煩悩はバイキンマン。バイキンマンを発生させないよう、わたくし意識、わたくしオーラ、マイルールを減らすようアドバイスをくださりました。
誰もが持つ感情
人間は、他人の欠点や失敗には、細かく目につくものの、自分のこととなると、なかなか気付かないものです。笑顔を作っていても、胸の中では、悲しんだり腹を立てたり、他人の幸せを心の底から喜べず、妬みの心が湧き上がってくる自分がいるのです。
こういった感情は誰にでも起こるのではないでしょうか。さまざまな煩悩(苦悩)は自分自身の心が作り上げてしまうのかもしれません。
怒りも煩悩
人間は、自分とその他のものを別物と認識し、自分を守るために都合の良いものを喜び、欲しがり、自分を脅かすものを嫌がり、怒りの対象にします。
それに対して、仏教では「他があっての自分でしょ!」と考えます。
イライラしている、機嫌が悪いなどの“怒り”も、煩悩によって不平や不満を感じている状態で、わたしたちは苦しくなります。
煩悩を消すのはむずかしい
いかに欲望のままに生きるのではなく、理性(精神)で押さえるのが人間です。死ぬと肉体がなくなり精神だけが残ります。
そうすれば煩悩も消えます。生きているうちに煩悩を消すのはまだ私は出来ていません。
煩悩とは、人間(肉体)が元々持ってうまれた欲望のため、消し去ろうとしても消せないのが人間であると、こちらのお坊さんはおっしゃっています。
いい欲(煩悩)を持とう
煩悩は、いい欲と悪い欲があります。
自分をよくしよう、向上させようという欲。
自分のためになにかしよう、そのために他者を苦しめてもいいなどの欲。
当然できることならば、ぜひいい欲を持ってください。
これらの回答に対し、質問者のalexさんは、「どこにも載っていないような非常にわかりやすい回答で質問してよかった」「こんなことを教えてくれる仏教はすごい」と、仏教の教えがわたしたちを救ってくれることを実感された様子です。
元の問答:煩悩とはなんですか?
わたしたちは、日々煩悩によって苦しみます。しかし、仏教はその煩悩の苦しみから逃れるためにあると教えてくださいました。
仏教では、自分の心に目を向け、心の状態を正しく理解することで苦しみから解放する道を目指すようです。心の平穏を得るために、わたしたちはもっと仏教を理解して学ぶ必要がありそうですね。ありがとうございました。