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我儘な自分をなんとかしたいです

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有り難し有り難し 6

初めての質問失礼します。かなり独特な質問であるため、回答していただきづらいと思います。申し訳ありません。

私は大学生で、毎日オンライン授業のため、家で学習に励んでいます。家にいる時は、私の好きな足利将軍家(特に初代足利尊氏)について研究しています。

なぜ私が特に足利尊氏に惹かれるかといえば、彼が大変「弱かった」からです。権力を確立した後も、どこか弱々しく遁世を願うその姿。

しかしその弱さの中に、人を思いやれる優しさを常にもつ繊細さに、大変興味を持ったのでした。

ですから私の心の中に描いている「足利尊氏」は、前述したような「どこか頼りないけれども寛容で慈悲深い人」という存在だったのです。

きっと、そうに違いないと思っていました。

しかし数ヶ月前から、某漫画誌でとある漫画の連載が始まりました。作者様はとても有名な方で、連載開始前からもかなり話題になっていました。その漫画には、主人公ではありませんが足利尊氏が登場します。しかもおそらくかなり大事なポジションで。

しかし、私はその中の足利尊氏像に、大変ショックを受けてしまったのです。

漫画の中の尊氏は、野心を燃やし、他人を蹴散らして権力を手に入れようとする人物に描かれていました。私の思い描く彼とは全く違うのです。

また、ツイッターを見てみても、この人物像に賞賛を送っている方しかいらっしゃらないのです。自分のような違和感を持つ方が誰もおらず、まるで世界にひとり置き去りにされたようで辛いです。

歴史というのは、正確なことは誰にも分からないため、様々な意見があってこそと思いますが、口だけで全くそう思えていない自分が嫌で仕方ありません。

つくづく、自分は勝手な人間だと思います。

一方的に自分の考えを押し付けた「足利尊氏のような虚像」を心に描いて安心しておきながら、いざその虚像が現実に否定されると怖くて仕方がないのです。

私は「虚像を好きな自分が好き」なだけなのかもしれません。

そのアイデンティティを否定されたようで、こんなにも恐れているのでしょうか。
こんな風に利己的な考えをしてしまう自分をなんとかしたいです。

また、先程の漫画での尊氏の人物像のように、自分が苦手だと思うことも受け入れた方がいいのでしょうか。

まとまりのない文章で申し訳ありません。
よろしくお願いします。


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お坊さんからの回答 1件

回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。

「研究」はものの見方と心を成長させてくれるもの

こんにちは。

あなたは、歴史上の人物に「研究」という姿勢で向き合っているのですね。
「研究」とは、小説などの物語や、エンターテインメントとしての「漫画」とは一線を画すアプローチです。面白おかしく、ではなくその実像に迫ろうとするその姿勢は素晴らしいです。それこそ「研究」なのですから。

あなたなりに、書物や当時の歴史的背景を追究していくほどに、その歴史上の人物像が見えてきたのでしょう。「弱さ」、「人を思いやれる優しさを常にもつ繊細さ」という表現は、先行研究や論文、検証の書物等を読んだからこその感慨なのだと思います。ぜひ、そのままの調子で頑張ってほしいな、と思います。

あなたの言うように確かに、あなたが研究した過程で捉えられたその像は「虚像」といえるかも知れません。しかし、考えてみれば当時に同時代を生きた人でも、その人そのものをどれだけ精確に捉えられるでしょうか。

対立する相手側にすれば不倶戴天の敵という像を。
家臣からすれば、偉大なリーダー。
正室さんからすれば、「弱さ」だったかも知れません。

人によって見方は既に違うのです。
人から見た人は、どこまでいっても「虚像」のそしりを免れないのです。

しかし、風聞や先入観だけで歴史上の人物を取り上げるのはエンターテインメントでは良くても、「研究」の名には値しません。「研究」は、誠実に客観的に向きああってこそ「研究」です。

あなたは、「いざその虚像が現実に否定されると怖くて仕方がない」と書いています。それは、どこか研究対象と自分を同一視しているから、「否定されると怖く」感じているのではないでしょうか。研究対象と自分を一致させてしまっている、と言う意味で客観性を確保できていないのだと思います。

また、あなたは「虚像を好きな自分が好き」かも知れない、と顧みています。

でも、そんなに自分を責める必要もない、とも思います。
人間は所詮、自分を抜きにものを見れないのですから。
客観性とは、出来るところでという留保がついています。

これからも自分を責めすぎない程度に、誠実に研究対象と向き合ってください。「研究」はものの見方と心を成長させてくれるものです。ぜひ、この調子で励んでください。

応援しています。

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有り難し
おきもち

釋 悠水(しゃくゆうすい)
浄土真宗本願寺派報恩寺住職(兵庫県三木市) 本願寺派布教使 元本願寺布...
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質問者からのお礼

ご回答ありがとうございます。
とても気持ちが楽になりました。
これからも自分の研究に邁進していきたいと思います。
コロナが流行しておりますから、どうぞご自愛ください。
本当にありがとうございました。

温かい気持ちになるお坊さん説法まとめ