hasunoha お坊さんが必ず答えてくれるお悩み相談サイト

お坊さんに質問する
メニュー
メニューを閉じる

泣けてくる理由がわからない

回答数回答 1
有り難し有り難し 13

半年前、母が95歳で亡くなりました。高齢ではありますが直前まで元気だったので、周りからしてみれば突然のことでした。
母は亡くなるその日、私の目の前で倒れ、その後数時間であっけなく逝ってしまいました。
若い頃は活発で正義感が強く面倒見のいい真面目な母でした。晩年は年相応に不自由な身体にはなっていましたが、亡くなるその日まで自分の意志を持って生活していました。
ただ、私に対しての干渉が酷く、何かにつけて口を出してきて、自分の思い通りにならないと機嫌が悪くなる人でした。私も反発して声を荒げることはありましたが、私を産んで育ててくれた母だからと思い、できる限り母の要望には応えるようにし、身の回りの世話もしました。けれどもいつしか母の存在がとても鬱陶しくなりました。今思い返しても腹が立つことの方が多か思い出されます。
だからでしょうか、母を看取った直後、悲しみや寂しさはなく、開放感しかなかったです。

ところが葬儀が終わった翌日から、なんとも言えない不安感に襲われるようになりました。何かにつけて母が倒れたその瞬間のことやその時の母の表情、母の声にならない声、倒れる数時間前の様子など、繰り返し繰り返し思い出し、胸が苦しくなります。そして一人になると突然スイッチが入ったかのように込み上げてきて、大声で泣いてしまいます。
寂しくもないのにどうして泣けてくるのか、何度自分に問うても未だよくわかりません。

同じような境遇の人と話をしても、皆それぞれ少しずつ想いが違い、この自分の感情に説明がつかずモヤモヤが残ります。
悲しくもなく寂しくもないはずなのに、なぜ涙が出てくるのか、ずっと考えてばかりいます。
なかなか母の遺品整理をする気にもなれず、自分自身の今後の生活にも希望が持てません。
この感情を説明づけることは無理なことなのでしょうか。


この問答を娑婆にも伝える
facebookTwitterLine

お坊さんからの回答 1件

回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。

モヤモヤする事にも意味がある。今はゆっくり休んで欲しいです。

お母さんを亡くされ、複雑な思いを感じているのですね。解放感があったのに、葬儀が終わってから母のことが思い出され、泣いてしまう。寂しくないのに泣けてくるのですね。この感情を説明したいと感じているという事なのですね。

私が思ったのは、人間は説明のつかない存在だという事です。それは既にお釈迦様も指摘しています。例えば五蘊盛苦(人間の心身を構成する諸要素が、勝手に暴れることをどうしようもできない苦しみ)。五蘊盛苦は人間が避けられない苦だと2500年前にお釈迦さまは喝破しています。自分すら自分を把握なんてできない。それが人間です。

感情を説明付ける必要あるのでしょうか?あなたは、他人の人生を説明したり、意味づけたり出来ないはずです。それが他者性という事です。それと同様に、自分の感情や生を意味づけたりする必要あるのでしょうか?意味づけることで一時楽になるかもしれませんが、本当は意味づけることの出来る事なんて、人間の生の中の本の一かけらではないでしょうか?そういう事にあまり意味はない。意味の分からないまま生きることを引き受けていかなければならない、そこに人間の苦しみ、悲しみがあるのです。それをどう引き受けていくのかを説いたのがお釈迦様です。

あなたがしてきた体験は、複雑で、とても説明などできないものでしょう。お母さんにもいやな事をされたかもしれないけれども、その中で育たざるを得なかったあなたの人生にとって母の存在は大きいはずです。解放感もあれば、当然喪失感もあるはず。なぜなら、あなたの人生を構成する一つの要素が、母親だったからでしょう。だけど、それは依存とは違うはずです。分れを引き受けて私たちは生きていく。別に母に執着する必要はないと思います。でも無理に、悪者に仕立て上げたり、なんであんな嫌な人だったのに、思い出すんだなんて思う必要もないと思います。(そう思いたいならそう思う事ももちろん自由です)

よく分からないものとしてあなたの前に登場した母が、よく分からないものとして去って行ったということなのではないでしょうか。今なかなか整理する気になれないというのもそれが悪いわけではない。そこに大事な意味がある。時間をかけて気持ちを整理していくのはどうでしょう。

人生を説明できない…多くの映画はそれがテーマになっている気がします。『息子のまなざし』『ある子供』等おすすめです。

{{count}}
有り難し
おきもち

浄土真宗本願寺派の僧侶です。 産業カウンセラーの資格を持っています。...
このお坊さんを応援する

質問者からのお礼

お坊さまのお答えを読ませていただき、また涙が溢れ出てきました。
「五蘊盛苦」という言葉ははじめて知りましたが、何度も読ませていただき、気持ちがとても楽になりました。
母に対する色々な感情が今また頭の中を飛び交っていますが、今はそれを無理に意味づけしようとせず、時間をかけて気持ちを整理していこうと思います。
本当にありがとうございました。

温かい気持ちになるお坊さん説法まとめ