敗色濃い人生(か?)。安心が得られず
昨年12月と今年3月と、「人徳」をめぐる悩みをご相談申し上げ、釋悠水先生、日延上人より、それぞれ得心のゆくお答えを賜っております。まずは心より御礼申し上げます。
私の人生も後半生に入りました。家族や師友には恵まれているほうですし、妄りに不平を称えることは、かりにも仏教を学んできた者として採るべき態度ではないと承知致しております。けれども、今後の人生が極端に好転するとは思えず、孤独死を避け得るほどの御縁を得てゆくことが先決かと考えております。こんなことを書くと孤独死なされたかたがたを侮辱しているように受け取られかねませんが、はい、そういう思いが皆無だと申せば……嘘になってしまいます。どうしても世間的な見栄というものが、どこまでも脳裏を掠めます。
良き御縁来い、御縁来いという態度があからさまですと、せっかくの御縁も逃げてしまうとはわかっているのですが、そういう思いを圧してしまうのが、
「おい、お前、人生敗色濃厚なんじゃないか?」
という焦りでございます。本当に敗色濃厚なのかどうかは、死ぬる瞬間にならないとわからないというのも、いかにも恐ろしく感じられます。
何か良きお守り代わりとなりそうな考え方はないものでしょうか。回答僧諸師へ深い感謝をささげつつ、ここしばらく蟠っていた煩悶を文字にさせて頂きました。ここまでお読みくださって誠にありがとうございます。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
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あなたの仏教をもう少し突き詰める必要性
こんにちは。
以前もご縁ありました。
「孤独死を避け」ることが今のあなたにとって大きな問題なのでしょう。そういった問題意識を「孤独死なされたかたがたを侮辱している」のかもしれない、と自問自答していますが、そんなことはありません。
なるべく、自分の死が安らかであり、親しいものに囲まれて命終わりたい。それは人間として自然な情でしょう。しかし、真に問題なのは「孤独死」という問題は、人間に全くコントロールできないのが厳然とした事実です。
そもそもあなたが言う「孤独死」とはどういう定義でしょうか。
あなたのお身内の状況は分かりませんが、だれか親しい人が自分の身近にいれば必ず「孤独死」を避けられるか。そうではないでしょう。
人間は、いつ、どこで、どのように亡くなっていくかは分かりません。
沢山の子孫に恵まれた人であっても、さっき別れた時まで元気だったのにその晩のうちに自宅で一人で・・・、ということもあるでしょう。そういうお話は決して特殊なお話ではありません。
あなたが「孤独死を避け得るほどの御縁」、「良き御縁来い、御縁来い」と願うのは、仏様にそれを願っているということでしょうか。あなたの仏教がどのような方向性かは分かりません。しかし、仏様が日ごろから身近な人に「孤独死」はそもそもあるのでしょうか。人間が側にいないという意味で「孤独死」にはなっても、仏様が居て下さったらそれで十分だとは思えないでしょうか。
あなたの仏教をもう少し突き詰める必要性があるのではありませんか。
質問者からのお礼
釋悠水先生:
土曜日でさぞ法務御多忙でいらっしゃいましょうに、早速の懇篤なお返事、誠にありがとうございます。あまりこのコメント欄では立ち入ったことは書けないのですが、私の育った家庭は普通のサラリーマン家庭です。ただ、同居していた老人が、かなり深く寺院(真宗ではありません)の活動に関与しており(檀家総代でもなし)、そのおかげで、寺族と呼ばれるかたがたのものの考え方は、一般の在家者よりは多少理解できるつもりであります。御縁あって仏教方面の大学院へも進みました。
そのおかげで、いろいろな宗派の基礎となる考え方に接し得たと思います。とりわけ、浄土真宗の思想には今も深く心を傾けております。ただ、それ以外の他宗の高僧がたの事績なども、研究を通じ、ごく自然に脳裏に印象づけられました。すると、「精魂込めた祈祷が成就して御自身や御信徒の大願を成就した」…なんて文献にも出会います。むろんウソとは思えません。宗祖がたがウソをつかれるものですか。
なにぶん寺族でもなく、自分自身の精神的な問題も大きいので、お寺の住職や職員をやるような器量は到底ないものと、悲しいけれど自認しております。さてそうなると、後半生に入った今、「どうすればぶざまでない老後や最期を迎えられるか?」 ということが気になって参りました。
以上とりとめもない文面で恐れ入りますが、いずれまた御芳答を賜る際、先生並びに他の回答僧諸師に「ああ、彼はこういう背景があるんだな」と御記憶頂ければ幸いでございます。なんだかうまく表現できないですが、「仏様が居て下さったらそれで十分だとは思え」る境地を無理なく、しかし究極的には目指して参ります。
毎回の懇切なお返事、重ねて御礼申し上げます。