まず、正義とは大体にキリスト教のような一神教の概念です。
神は正義。悪魔は邪悪。創造主たる神の目指す意志に沿った行いが正義であり、使命。その邪魔をするのが邪悪。だから一神教において正義は絶対です。

ところが法律という正義は流動的です。
ファーストガンダムの頃は「ぶ、ぶったね！二度もぶった！親父にもぶたれたことなかったのに！」が、親にちゃんと向き合ってもらえずに育った青年を象徴するセリフでしたが、今じゃ体罰は人間のクズがするような扱いです。ファーストガンダムのリアルタイム世代がまだ多数派にも関わらずそれだけ変化してしまいました。それだけ人の心は移ろいやすいものです。
本来、法治国家とは国民がどう感じようが厳然たる法ありきだったのですが、小泉政権あたりから『被害者の救済のため』に世論で法が動くようになりました。昨今、厳罰化と言われているものの多くがそれです。そのような風潮をあなたはどう思いますか？

仏教に正義はありません。
しかし悪の概念はあります。悟り（安楽）に向かう方向が善、迷い（苦）に向かう方向が悪です。ただしキリスト教の邪悪とはちょっと違い、仏教の悪は『愚かさ』というニュアンスです。
強盗や殺人が当たり前の社会ではどう生きればいいでしょうか？常に武器を所持し、皆が武器を所持するがゆえにさらに傷つけ合い、会う人会う人みんな警戒せねばなりません。すると日常生活も不便ですが、仕事もはかどらなくなります。ゆくゆくは社会全体が停滞します。それは愚かさです。
しかし、誰も強盗や殺人をしない社会では、女性が夜中に一人歩きできるほど快適に過ごせます。仕事も直接的な生産性のためにリソースを割き、移動も取引も運輸も安心安全です。それを賢さと言います。

最後に仏教学の教授の受け売りですが、徹底的にやれば理屈は屁理屈に絶対に敵いません。「最終的には地球が滅んだってカンケーないじゃん！」とか言い出したら付ける薬もありません。人類の文明の歴史は何万年とありますが、それでも殺人はダメということにしておく方法を、「殺すなよ！殺したら殺すからな！」という『刑罰』と、「釈迦っていう偉い人がそう言ったんだから、きっとそうなんだろうな」という『教え』のたった２つしか人類は開発できていないのです。

正しさは危ういものです。
だから価値観は壊れてしまわぬよう『護らねばならないもの』です。

大慈

曹洞宗副住職。タイ系上座部仏教短期出家（捨戒済み）。仮面系お坊さんYouT...

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”｢正義｣ってこの世に必要なのだろうか？”
”仏教に｢正義｣はあるのでしょうか？”
この世に正義が必要なのか否かと問われるならば、それは『絶対に必要である』と私は思います。でも、その一方で「本当にそれは”正義”か?」とあらためて問い直す為の材料のひとつが【仏教】であると思います。

「王法は額にあてよ。仏法は内心に深く蓄えよ」
「仏法をあるじとし、世間を客人とせよ」
「王法をもっておもてとし、内心には他力の信心を深く蓄えて世間の仁義をもって本とすべし」
これらは、浄土真宗中興の祖といわれる蓮如上人の御言葉です。
ご周知の通り、仏法というものはたしかに常識でははかりしれない広さと深さそして重さを持つ教えではございますが、一般常識を蔑ろにしてまで取り組まなければならないような破廉恥なものではありません。

そもそも世の中は、決して仏教を中心にまわっているわけではありません。
世の中をまわしているものは、あくまでも【世間の仁義】つまり、みんなで作った掟やルールであるという事を忘れてはいけませんね。

”正義って本当は曖昧で何が正義で何が正義じゃないのか”
もしかすると、答えなんか一生かかっても出ないかもしれないけど、一生かけて考える価値のある疑問だと思います。ぜひこの疑問を大切に持ち続けてください。

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