亡くなった人の思いはあるのかないのか
今年四月に父が亡くなりました。
両親は私が五歳の頃に離婚をしました。
母に育ててもらいました。感謝しております。
私は今まで父の事をないものとして生きてきました。
帰ってこない、蒸発した父と教えられてきたので
その通りだと思って生きてきました。しかし、本当は違いました。
父は母と離婚したのち、数年後に再婚しておりました。
そのことを親戚に聞きました。子供まで二人作っていたことも
知りました。正直ショックでした。そんな人だと思いませんでした。
それも父が死んでから親戚に電話口で聞かされました。
私は今まで二十年以上、何も知らずにのうのうと生きてきたのです。
馬鹿馬鹿しくなりました。そして情けなくもなりました。
自分に対しても、父に対してもです。
私は父のことが好きでした。今も好きです。
本当に好きでした。それなのに父は裏切った。
今も苦しいのです。私にはお父さんがいなかったのに
その子たちには二十年以上、お父さんがいた。
一緒に生きてきた。一緒に生活をしてきた。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、そんなこともあったのでしょう。
そんなふうに普通の家族としてその二人の子供はお父さんと一緒に
いれたのです。しかし、私にはそれがなかった。
父は私のことを無いものとして生きてきました。
私のことを完全に無視しました。
しかし、私もまた同じでした。
私も父の事を無いものとして生きてきました。
そうしなければ、生きていけなかったからです。
封印して父の記憶消しました。父と私は似ています。
きっと父もそうだったのではないかと思います。
本当はつらかった。今も苦しいのです。
死んでから父のことが頭から離れません。
今まで生きている間は父のこと考えもしませんでした。
忘れているのではなかったのですが、封印したのです。
父に会いたいと思ったことも全くありませんでした。
しかし、父が死んでからそのことを聞かされてから
父に会いたくて会いたくて堪りません。
こんなに人を思う、こんなに誰かのことを思うのは、
私の人生の中で初めてです。自分がビックリしています。
毎日毎日父のことばかり考えています。
昔はあんなにどうでもよかったはずの人なのに。
もしかすると父も私のこと見ているのでしょうか。
父も私のこと思ってくれているのでしょうか。
私は何故だかそんな気がしています。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
出会い直す
ご相談拝読しました。お父様のご命終に謹んでお悔やみ申し上げます。
苦しく切ない胸の内をお聞かせいただきました。亡くなったお父様がどこかに何らかの形で存在してあなたのことを思っているかどうか、それは確かめることはできません。
しかし、あなたがこんなにもお父様のことを思うということからは、亡き今も、そしてこれからも、お父様の存在はあなたに大きな影響を与えるということは間違いなく言えるのでしょう。それはけして自分の気持ちの問題というだけでなく、お父様の存在の事実、そしてご命終の事実からあなたが問われ続けるということなのだと思います。
>昔はあんなにどうでもよかったはずの人なのに
とのこと。実はそうではなく、どうでもよくない人だからこそ、その存在があまりに大きいからこそ、あなたは自分の中でお父様の存在を封印したのではないでしょうか。生きていくために。
そこから想像できることはお父様にとってもあなたの存在はとてつもなく大きなものであったということでしょう。お母様との関係やその他事情もあったのでしょうか…願ってもあなたにできなかったことを新しい家族において営みながら、やはりあなたへの思いはあり続けたものと想像します。お父様もやはり生きていくために自分の中での選択をしたのでしょう。
それを裏切りと言うあなたのお気持ちはけして否定できません。でもあなたも感情的に今すぐ受け入れられないだけで、けしてそれだけではないものを心で感じていることとお察しします。
その思いが、あなたのことを思い続けるお父様という形であなたの中に表れているのではないでしょうか。
人は亡き後でも出会い直せます。出会い続けていけます。それぞれの状況や感情が許せる範囲やタイミングの中で、お母様やご親族やあるいは向こうのご家族などから、お父様の存在の事実のお話しをお聞かせいただくことはできるでしょうか。
その事実から、ずっと無限のはたらきを受けていけます。「あなたにとって」のお父様との再会がそこには間違いなくあるのです。
お父様の願いに触れる、そのお父様のご命終という縁において仏様の願いに触れる、その中で「あなたにとって」のお父様との出会い直しがあるのでしょう。
あいあい傘
なほこさま
色々な事情があれども、自分の子どものことを思わない親はいないのではないだろうかと存じます。
貴女さまが今、思っておられるように、お父様もきっと貴女さまのことを思っておられているのではないだろうかと思います。
ご質問を拝見しまして、ある映画を思い出しました。
「あいあい傘」という映画です。宜しければご覧になられてみて下さい。
川口英俊 合掌
質問者からのお礼
なほこです。お返事読みました。
川口英俊様、あいあい傘見てみます。
お父さんも思ってくれているといいなと思います。
お優しいお言葉を、本当にありがとうございました。
テレパシーみたいなものがあの世にもこの世にも
あるといいのにな、とふと思います。
吉武文法様、出会い直し、という言葉にハッとしました。
なるほどと思います。亡き父ではありますが確かに今再び
出会い直しをしている感覚があります。
私の知らないお父さんとの出会いです。
それはそれでこんなに素敵なことはないのだろうなと思います。毎日苦しみの中ですが出会いだと思えれば毎日が少し楽しくまた輝き素晴らしいものとなるのかもしれません。大変勉強になります。煌めきの中でお父さんとの思い出を辿ってそしてまた作っていきたいと思います。お父さんとの新しい出会いを期待しております。向こうで会った時に懐かしさを忘れずにいようと思います。
お二人のお坊さん、本当にありがとうございました。
感謝しております。お身体にお気を付けください。
ご自愛くださいませ。それでは、失礼いたします。