日蓮宗、特に立正安国論について
些細な仏教に関する疑問ですので、どうかお手すきの時にお答えいただけると幸いです。
中高生のころ日本史を学んだ際に、日蓮は立正安国論という浄土宗をはじめとしたほかの宗派を厳しく批判する書を記し、晩年までそれを重んじたと習った記憶があります。
今の時代のお坊さんや日蓮宗は多宗派や立正安国論をどのように思っているのですか?なんとなくこの授業のイメージから日蓮宗は多宗派、宗教に厳しい目を向けている少し怖い宗派、という印象があるのですが実際はどうなんでしょうか?
この質問を見た方が偏見に満ちていると感じ、不快になったら申し訳ありません。単純な疑問ですのでお許しください。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
改めて見直すことができました。
祈織さんは、大変勉強されていますね。
日蓮宗の一僧侶としてお答えします。
立正安国論は、当時の世相を鑑みた日蓮聖人が幕府に対して諌暁(かんぎょう)したもので、文章形態は客と主人の会話形式になっています。冒頭は「客が来られ嘆かれた、近年、大地震や大風など天変地異が起こり、そのため飢饉や疫病などが流行り、災害がこの世の中に満ちています。その結果、道端に牛や馬の死骸が散乱し、人々も大勢の人が死に耐えています。こんな悲惨な状態を悲しまない人は誰一人いません」(直訳)そして、その原因と対策を主人が答えていくという内容です。
もちろん、他宗の批判的な内容に受け取られますが、決して他の経典を批判している訳ではありません。それはこの立正安国論を書かれるのに、あらゆるすべての経典(一切経)を3回読まれた中で、お釈迦様の真意は妙法蓮華経であると結論されました。
当時、日蓮聖人が誕生された時、法然上人は遡ること約100年前の方であり、親鸞聖人は50歳でした。当然、世の中にはあらゆる宗派は設立され、全国に広まっていました。仏教が広まっているのに、何故、世の中が安定していないのかという原因を経典から導きだしたということです。
他宗を批判しているかのような表現(四箇格言:しかかくげん)がありますが、これは日蓮聖人が命名されたのではなく、そのような表現があるというものです。又、当時の各宗祖は皆、法華経を学んだはずなのに受け入れなかったことに対しての批判であったと思います。
いずれにしても、ここでは説明不足になりますし、返って誤解を招くことにもなりかねませんので、ここで止めておきます。
日蓮聖人は機(時期:タイミング)の重要性を説かれています。末法の時代における(今もそうですが)人々をいかに救うか、又、こうして現在を生かされている私たちは何をすべきかを問われていると思います。
宗教宗派はそれぞれの教学で成り立っています。当然ながら自分の信じる教えを優位であると主張するのは当然です。今、世の人たちは宗教離れで宗教によって救われると思っていません。ゆえに、このような時代こそ自らの信仰を見直す時でもあるのかもしれません。今月16日は奇しくも日蓮聖人の生誕800年なのです。
又、このようなご質問を頂くことで再認識をさせて頂けました。
歴史は出来事で見ない
祈織さん、私は歴史好きですので、歴史的に回答します。
鎌倉仏教を一括として見るのではなく、その時代に生きた人たちの思いで観ましょう。
日蓮上人は鎌倉仏教でも一番若いです。ほぼ他の宗派の開祖達が布教活動したあとに活動したと言っても過言ではありませんよ。だから、他の宗派が平和のために活動しても現状は変わらないことを嘆きこのような批判的な文章になったと思います。
歴史は記録だけを見ないでその時代に生きた人たちの思いを想像するとロマンが溢れてきますよ。