辛くても「今」に意識を向けるべきなのでしょうか
いつも皆様には分かりやすくご丁寧なご回答を頂き、本当に感謝しております。 このサイトと巡り合えた事は幸運だと思います。
初歩的な質問かもしれませんが、どうしてもいまいちピンとこないことがあります。
「過去」でも「未来」でもなく「今」に意識を向けて生きるべきだと学びました。
しかし、今のこの現実が辛くても、「今」に意識を向けるべきなのでしょうか?
つい幸せだった過去を思い出してしまうのですが、過去の幸せは今の自分には無意味なのでしょうか。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
同じ今でも 1センチズレているのです。
あなたが相手にされている今は、考えの上での「今」なのです。
概念化された「いま」。
同じ今でも「事実の今」と「思いの上で思い描いた今」とは別物です。
わたしはかえって「今ここ」に集中しなさい的な表現は、正直あまり好きではありません。
言葉というものは、何となくわかったような、悟ったような気にさせてしまうからです。
本当の「今ここ」には、イマ・ココ なんて コトバやラベルすらついていない。
情報化された「イマココ」は同じ、今ここであるようでも、ワード地獄と変わらんです。
あなたはそこにハマっている。
だからあなたは苦しい。
理屈で悟ろうとされておられるからなのです。
以下の違いを感じ取ってみてください。
たとえば「一生懸命やりなさい」
本当に一生懸命の人には、一生懸命なんて言葉すらない。
たとえば「悟りは考えではない」
「なるほど考えを無くせばいいのか」と考えているから、考えの世界から抜け出せない。
過去でもなく未来でもなく、今に集中しましょう、という時の「いま」というのは、所詮、言葉です。
仏教理論者は、言葉で安住させる。
佛教実践者は、真実に安住させる。
この微妙な違いを見破って頂ければ、あなたは言葉の上での「いま」ではなく、本当の今を実感できるでしょう。
あなたが過去の楽しかったころを思い起こすのもやっているのは「いま」。
その時、損なわれている「いま」の事実がある事に眼を向けてみてください。
わからなければ、うちのお寺にお越し頂くか、お電話にて。
今この瞬間ちゃんと生きられてるから大丈夫
この場合の「今」とは、「現代」とか「今月」とか「今日」とかのスパンではなく、0コンマ何秒レベル、さらに細かい瞬間(刹那)の「今」のことです。
今、このサイトを見ているこの1秒間に、目を背けたくなるようなできごとはあったでしょうか?
息をしながら眼球を動かして、ちょっと脳を動かした程度でしょう。
今の一瞬の時間の中にも、心の休息は作れます。
まあ、その一瞬の休息時間のときに、過去の良い思い出に癒されるというのも、趣味としてはアリだと思いますが。
その場合は、過去の幸せではないのです。
今・ここで、良い思い出を再生して、今まさに幸せを感じているわけですから。
ほんの一瞬にも心は休息できます。
電話のベルが鳴ったとして、電話に手を伸ばして電話に出るまでの数秒の間にでも、晩ご飯のことを考えたりできますからね。
それくらい時間をコマ送りで認識できたら、「辛い現在」というのが幻だと気付けるかもしれません。
私たちは、点と点とを概念でつなげて、ずっと辛い時間が続いている錯覚をしているだけ。
本当は、1時間前の一瞬と、数秒前の一瞬と、2回だけ、合計2秒程度辛いことを思っただけかもしれないのに、1時間絶え間なく辛かったと錯覚をしていたりするのです。
移り変わっていくから「今」を生きろ
北斗星さまのお気持ちに添った答えではないかもしれませんが、私の考えを述べさせていただきます。
「過去」でも「未来」でもなく「今」を生きろという教えには、仏教の諸行無常の教えに即した生き方だと思います。
同じ私でも昨日と私と、明日の私は少し違います。外見は似ていますが、体内では新陳代謝が起こり昨日とは違う血液が流れています。人間は常に川の流れのように移り変わっています。
科学や技術が発達した現代でも、この変化の流れだけはコントロールすることができません。
時間が流れる以上、1つのところに留まることができない存在であることを意識せよ、ということを「今を生きよ」というメッセージに感化されたのではないでしょうか。
拙い答えで申し訳ございません。
質問者からのお礼
皆さまのお言葉、親身なご指導に感謝いたします。 少しずつですが、心の苦しみが和らいでいる事が実感できます。
丹下覚元 様
ありがとうございました。おっしゃって下さったアドバイスをヒントに考えてみました。私は「今」という言葉を「今の私が置かれた辛い状況」とすり替えて考える癖があるのかもしれません。確かに言葉に捉われているのでしょうね。まだピンときていない部分もありますが、「辛い今」が「本当の今」は別物だと考えるだけでも少し気が楽になりました。ご丁寧なアドバイスありがとうございました。
願誉浄史 様
ありがとうございました。確かに1秒間だけを切り取って考えてみると辛くありませんね!「刹那」という言葉は普段あまり意識していませんでした。 アドバイスして下さったとおり、時間をコマ送りで認識することをイメージしてみようと思います。「辛い現在」が幻だと、心から実感できるようになりたいです。具体的にご指導くださりありがとうございました。
赤澤貞槙 様
ありがとうございました。「諸行無常」は好きな言葉のはずなのですが、普段は忘れているような気がします。諸行無常だから「今を生きる」しかないのですね!おっしゃる通り、時間が常に流れていること、移り変わっているから一か所に留まることができないという事実を忘れないようにしたいと思います。川の流れはイメージしやすいですね。とても分かりやすくアドバイスして下さってありがとうございました。