生きる・死ぬとはなにでしょうか。
私は長く高齢者施設で働いています。施設では医療行為は行えず、死を待つだけ。
昔は床の間の畳の上で看取りをしていましたよね、施設とは云え同じように職員が看取っていくのです。
人の生きる姿を見るときは、死はまだまだ遠い先に見えるものなのです。しかし死へ向かう姿を見るときは目先に見えるものです。私たちはどのように送り出せばよいのか、心を痛める瞬間が多いです。何もできない。わずかな時間手を握ることそれだけです。それ以外の時間は業務です、体を拭いて・点滴をして・清潔な環境・シーツ交換・栄養補給…。
私は人の死に向かって生きる姿・死を前にされている方にどんな手が差し伸べられるでしょうか。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
過酷な業務ですが、暖かさと潤いで入所者は安らかに旅立てますよ
曹洞宗の吉田俊英と申します。
高齢者施設で働く。非常に尊いお仕事であると同時に、非常に過酷なお仕事に励まれていることと思います。介護保険制度の中で、限られた人員で最大限の入所者の介護を行わざるを得ない現状の中で、施設職員の皆様は介護の現状に呻吟したり煩悶したりしておられることと思います。
家族親族が居られても、週に一度来所出来れば良い方でしょう。特養ホームだと、ほとんど家族が顔を見せないケースも少なくないと聞いたことが有ります。そういう意味では、入所者にとって、施設職員の皆様だけが頼みの綱と言う現状かと思います。
最近、hasunohaへ「孤独感をなくすにはどうしたらよいですか」という質問がありました。私は「独生独死 独去独来」という経典の中の言葉を引いて回答させて頂きました。
http://hasunoha.jp/questions/677
人生は諸行無常です。私の命もあなたの命も、諸行無常です。臨終に際し、テレビドラマや映画のような感動的な別れや看取りなんて、滅多に有り得ません。
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私たちはどのように送り出せばよいのか、心を痛める瞬間が多いです。何もできない。わずかな時間手を握ることそれだけです。
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という現状に悩んでおられますが、僭越ながら、私はこれで十分かと思います。私達は生まれた瞬間から「死出の旅路」を歩んでいるのです。但し、病院や施設に入院入所したからこそ、より深刻にそのことを感じていることもまた事実でしょう。「死にゆく人のために、何か手を差し伸べてあげたい。」という気持ちで接してあげることで、十分だと思います。シーツ交換、おむつ交換、点滴食事、着替え等、数を熟すためにはどうしても機械的に事務的になってしまうでしょう。手を握って差し上げることで、入所者はあなたの手のぬくもりを感じるでしょう。それだけでも、入所者の心は潤うと思います。
素人考えで敢えて申し上げるなら、上記の処置をしてあげる際に、入所者に向ける「まなざし」と「言葉」の問題だと思います。機械的にならざるを得ない中で、どれだけ「眼差し」と「言葉」に暖かさを込めてあげられかということに尽きると思います。そういう暖かさが少しでも伝われば、入所者は安らぎの中で旅立っていかれると思います。
終末看護・終末看死へと向けて
ルカ様
川口英俊でございます。問いへの拙生のお答えでございます。
高齢者施設でのお仕事、そして看取りのお役目・・本当に有り難く尊いことでございます。
本来であれば、私たち宗教者がしっかりと看取りという現場にて、安心をお与えできるようにして差し上げられるとよいのですが・・なかなかそうもいかないこと、誠に申し訳なくに存じております。
もちろん、終末看護・終末看死について取り組んでいる「ビハーラ」という活動もございますが、まだまだ世間への認知度は低くございます・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/ビハーラ
また、東日本大震災後に、東北大学が中心となって様々な心のケアに取り組むための宗教者の育成へと向けた講座を始めたことから「臨床宗教師」の養成、普及へと向けた動きもございますが、始まったばかりであり、今後の展開次第となってございます。
以前に「臨終」に際することに少しだけお答えさせて頂いております。
問い「死について」
http://blog.livedoor.jp/hasunoha_kawaguchi/archives/1002969863.html
「・・臨終に際して、穏やかに安心して心が落ち着いた状態を保てるようにとして、看取る者たちが、優しく温かい言葉を掛けてあげること、感謝や報恩の気持ちを伝えること、後顧の憂いを無くしてあげれるようにすることなどを通じて、できるだけ安らかに逝かせてあげれることが必要となるのではないかと存じております。・・」
誠に人の死に立ちあう中で、悩み、そして、つらく、悲しいことも多々あるかと存じますが、あまりご無理はなさられずに、本当に少し手を握り、話をただ聞いて傾聴して頂くだけでも大変に有り難いことであるかと存じます。
少し難しいことになりますが、下記の拙回答も少しくご参照頂けましたら幸いです。
問い「死への恐怖がぬぐえません」
http://blog.livedoor.jp/hasunoha_kawaguchi/archives/1002999290.html
問い「生きること、死ぬこと、どっちが辛いのか」
http://blog.livedoor.jp/hasunoha_kawaguchi/archives/1002992500.html
誠にありがとうございます。
川口英俊 合掌
質問者からのお礼
遅くなりました。貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。