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悟りを開いても倫理観を持てるのは何故でしょうか?

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有り難し有り難し 13

中論では「四不生」として物事のあらゆる原因が否定されています。
この部分を読んでいつも不安に思うのは、一歩読み違えるとトンでもない意味になるかもしれないという事です。

人が他人に優しくしたり善行を積もうとするのは、自分が既に他人によって恩をを受けているとして感謝し、その恩を返そうとする恩義の心によって成り立っているからだと思います。
まず自分という肉体は両親によって与えられ、知識や教養は先生によって叩き込まれます。当たり前の事ですが、自分という存在は他者によって成り立つものですよね。

しかし中論では
「もろもろの「存在」は、どこにおいても、どのようなものでも、自身から、また他者から、また〔自身と他者との〕両者から、また無因から、生じたものとして存在することは、決してない。」
とします。
要するに他人から恩を受けたとしても、「これは貴方が原因で生じた訳ではない」とか、
自分が他人を殺したとしても、「その人の死は私が原因によって生じた訳ではない」と詭弁を弄する事も可能ではないのでしょうか?
(私はそうは思いません)

自分が明らかに中論のこの説を読み違えている事は分かっているのですが、どこを読み間違えているのかが未だに分かりません・・・。
何卒よろしく御願い致します。


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お坊さんからの回答 2件

回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。

詭弁を弄することが可能だから正師に出会うことが不可欠

『中観論疏』という注釈書にはこう説明されています。
>四不生即無相之相名為実相
→四不生とは形が無いという形である。これを実相(ありありと現れている)と呼ぶ

意味が分かりませんね。でも「無とはnothingという意味ではない」というのは感じていただけるでしょう。明治期の禅僧、岸沢惟安老師は「無や不、非という字は全で読み替えなさい」という主旨のことをおっしゃっています。
正直、四不生に限らず、ここを押さえずに虚無主義的に解釈している解説本は一切読まない方がいいです。どんなに偉い先生が書いていようと、それ自体が邪見です。(むしろ中論は大学の教授でも、ゼミ等で専攻する学生以外に教えたがらない物であって、入門書としては最も適さない部類なのですが…ピアノを始めた人がいきなりショパンをひこうとする感じです)

さて、大昔の中国禅の道場でこんなやりとりがありました。細かい所はうろ覚えですが
師匠「なぁお前さん、これは何じゃ?」
エリート弟子「花瓶であると言うこともでき、同時に花瓶にあらずと言うこともできます」
田舎モン弟子(ガラッ)「失礼しゃーす、お届けモンっす」
師匠「おいお前さん、これは何じゃ?」
田舎モン弟子(黙って花瓶を蹴り倒す)
師匠「田舎モン弟子がエリート弟子に勝ったぞ(笑)」

これこそ四不生です。要するに頭で概念化する前の、眼耳鼻舌身意で感じたままの世界に生きろということ。どんなに網羅的に、上手いこと言っても、それはあくまで概念。ラーメンの食レポであっても、ラーメン自体ではない。つまりどんな表現をしても、言葉は存在を決定付けない…そういう話です。

なお、「存在」と言うと話が広がり過ぎるのですが、地水火風や色声香味触法というダルマの始まりや終わりを議論してもかえって迷うだけですよ…という読んだ方がピンと来やすいでしょう。

最後になぜ無や不、非を全で読み替えると智慧と慈悲になるか?こちらをご覧ください
http://hasunoha.jp/questions/3160

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おきもち

曹洞宗副住職。タイ系上座部仏教短期出家(捨戒済み)。仮面系お坊さんYouT...
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「実体(自性)による成立の否定」

akbcde様

川口英俊でございます。問いへの拙生のお答えでございます。

「四不生」の理解は、要は「実体(自性)による成立の否定」というものとなります。

もう8年前の拙論となりますが(修正したいところがありますが、あえて原文のままで)・・

『・・私自身という実体があるとして、「自生」とは、事物が、自体から生じる、そのもの自体からそのもの自体が生じる、つまり原因と結果が同一ということで、例えば、私自身は私自身から生じるとなれば、既に存在しつつある私自身から更にいくらでも私自身が生じることとなりますが、そのようなことはありえません。「他生」とは、事物が、他から生じる、原因と結果が別異ということで、私自身が他人という実体から生じるということになりますが、それならば、いくらでも私が生じることになる、更には、一切のものから一切のものが生じることにもなりますが、そのようなことはありえません。「共生」とは、自と他の両者から生じる、つまり、私自身が、私自身と他人との両者から生じるということで、原因と結果が同一なることと、原因と結果が別異であることとのどちら共から私が生じるということは、先に示した「自生」も「他生」も成り立たないことからも当然に「自と他」共から生じることもありえません。「無因生」とは、事物が、原因がないのに生じる、自でもなく、他でもないようなものからでも生じる、つまり私自身が私自身でもない、他人でもない、何ら原因がなくても生じるということになり、それならば常に私自身が生じるということになり、更には一切のものから一切のものが生じるということにもなりますが、そのようなことはありえません。このようにして、自性としての因果関係の成立を全て否定し、無自性としての「不生」を示したのであります。「四不生」については、もちろん「不滅」も同様であり、「不生不滅」について説明したものであります。「不生」をもう少し簡単に述べますと、もしも、あるものに実体が有るとするならば、その実体有るものが更に生じるということはありえない、また、もしも無いとするならば、無いものが生じるということもありえない。更には有るとして無いとするものも生じることはない、ということでもあります。・・以上』

簡単には、実体・自性としての原因・結果というものは成立し得ないということになります。

川口英俊 合掌

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おきもち

Eishun Kawaguchi
最新の仏教論考はこちらでご覧頂くことができますが、公開、非公開は随時に判断...
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質問者からのお礼

回答有難うございました。
大慈様、川口英俊様のお二人にはいつもお世話になっており、誠にありがとうございます。
今後とも何卒宜しくお願いいたします。

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