母に振りかかった突然の病
先日、母に癌が見つかりました。
風邪一つせず、生活習慣も健康そのものだった母にそのような重い病が見つかったことはまさに青天の霹靂でした。
かなりたちの悪いものであるらしく、さらに転移の可能性もあるということで、今まで意識もしなかった母の死と言う現実を眼前に突き付けられ、目の前が真っ暗になったような気持ちです。
母の命の灯火がいつ消えるのかはまだ分かりません。1年後かもしれないし、もしかしたら治療が上手く行ってまだまだ生きてくれるかもしれません。
しかし一度意識してしまうと、様々な思いが頭をよぎってしまいます。私は良い息子ではありませんでした、まだ学生で進路も決まってなく、親孝行もろくにしないうちに母がこの世を去ってしまうかもしれないと思うと胸が痛みます。
人の命に限りがあることは分かっているつもりでした。それでもいざ近しい人間に、しかもこんなにも早くそれが訪れると思うとやりきれない気持ちでいっぱいです、
日々悪化する診断結果にショックを受け、涙を流すほど辛いのに私の事ばかり気遣う母を見ていると、なぜこの人が、という理不尽さに対する怒りすら湧いてきてしまいます。
この気持ちにどう整理をつければ良いのでしょうか、何か道標になるようなものを教えていただければ幸いです。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
ご心配ですが、深く悩まないことです。
合歓木さんのご心痛お察し申し上げます。
お母様のご病気の早期回復をお祈り申し上げます。
突然の病気の発症と告知を受けられた時、ご本人はもちろん、ご家族や周囲の皆さんは大変なるショックと戸惑いは隠せません。
それを語る、私自身も昨年4月、悪性リンパ腫(血液癌)と診断され、家族の大変なショックを受けました。そして抗がん剤治療、放射線治療と昨年はとても貴重な経験をしました。今は2ヶ月に一度の検診を行っています。
さて、合歓木さんのご心配や不安はいかばかりかと存じますが、まずは、医師の指示に従ってください。癌とと言っても様々な種類があり、その治療法もすべて異なります。それゆえ、私の経験したことはあまり参考にはなりませんが、それでも、現代の医学をまず受け入れて治療に励んでくださるよう、周囲も協力してあげてください。
医師からは最大限の説明を受けます。どんどんと落ち込むような説明ですが、これは仕方ありません。中途半端な説明は後から問題が起きるからです。しかし、実際にそのような経過をすべての人が辿る訳でもありません。それは経験しました。
ゆえに、お話は聞いておくことも大切です。
又、お母様ご自身は胸中は分かりませんが、それでも皆さんのことを心配されているとのこと、それは素晴らしいことです。ゆえに皆さんもそのように振る舞ってください。
そして、私自身は「がん患者である」と自覚を全くしていませんでした。家族もそのように通常通りに接し、普通に生活をしていました。一番はあまり意識しないことがいいのかもしれません。癌であることを意識すればするほど、がん患者になってしまうからです。
お母様のことご心配でしょうけど、合歓木さんが明るいしないといけません。
笑い声が聞こえるような雰囲気も大切なのです。
親子と言えども、一緒に居られる時間は限られています
曹洞宗の吉田俊英と申します。次のような経典の言葉があります。
人在世間愛欲之中 (人、世間の愛欲の中にありて)
独生独死独去独来 (独り生じ独り死し、独り去り独り来りて)
當行至趣苦楽之地 (行に当たり 苦楽の地に至り趣く)
身自當之無有代者 (み 自らこれをうけるに 代わる者あることなし)
これは無量寿経という経典に有る言葉です。私の宗派ではこの経を読むことはまずありませんが、或る時本を読んでこの言葉に出会い、かなり強烈なインパクトを受けました。かなり厳しい言葉ではありますが真理を衝いているなあと思います。
愛する親子。愛する伴侶、愛する家族が居ても、生まれる時から死ぬまで一緒ということは不可能です。「常に一緒、生涯一緒」という訳には参りません。家族と言えども、期間限定。親子と言えども期間限定。そう理解すべきだと思います。
期間限定であるからこそ、今まで共に過ごした時間は尊いものです。共に過ごした思い出は尊いものです。お母様との残された時間は少ないです。今やるべきことは、残りの時間をお母様と共に少しでも有意義に過ごす。あなたの子として産まれてきてよかった。あなたの子として育ててもらってよかった。そういう気持ちで接してあげましょう。
これから、就職し社会人となり。結婚し家庭を持たれると思います。お母様も合歓木さんが歩むこれからの人生を見守り見届けたかったと思います。でもね、今後住む世界が違ったとしても、お母様はあなたのことを遠いところから見守り続けてくれますよ。それだけに、「頑張って生きるよ。いい仕事もする。母さんをお手本にしていい家庭もつくる。子供にも愛情を注ぎ、母さんの思い出を語るよ。」という気持ちを今のうちからお母様に伝えてあげましょう。そして、自分自身の課題として、これからの人生を歩んでください。