お経を唱える際の心構えについて
毎朝、ご先祖様へ感謝の気持ちをお伝えしたくお経を唱えています。
実家では祖父が毎朝般若心経をお唱えしているので、私も馴染みのある般若心経を唱えています。
そのときの心待ちについてお尋ねします。
YouTubeでお坊さんがお唱えする動画にあわせて行っているのですが、正直文字を追って口を動かしているだけでいっぱいいっぱいになってしまい、感謝の気持ちをこめることができません。こんな状態でも感謝のお気持ちはご先祖様に伝わるのでしょうか。
般若心経の内容について勉強したりしていますが、まだまだ暗記することができなくて。気持ちを込めたくてもお唱えでいっぱいいっぱいになってしまって、できない自分にちょっと悲しくなります。
回答は各僧侶の個人的な意見で、仏教教義や宗派見解と異なることがあります。
多くの回答からあなたの人生を探してみてください。
無理にYouTubeに合わせようとしない方がいいですよ
尊い御修行、ご苦労様です。そんな気にすることはないですよ。お経を唱えようと気持ちを持ち、練習をする。それだけでも、きっとお祖父さんは喜んでくださっていると思います。
菩提寺が近くにあるなら、菩提寺のご住職の指導を仰ぐのが一番良いと思います。菩提寺のない方が知らないお寺の門を叩くということに、敷居の高さを感じる方も少なくないと思います。YouTubeの動画は参考にはなりますが、初めからそれに合わせようとすると却ってたいへんだと思います。
経本にはふりがなが振っていると思います。ゆっくりでいいですから、一字一句丁寧に声を出して、読んでみましょう。全部通して読もうとしても、つかえてしまって続けるのが難しいかもしれません。それなら、全部をいっぺんに読もうとしないで、般若心経を3つのパートに分けて読んでみたら良いと思います。
たとえば
1、「観自在菩薩 ~~ 不生不滅 不垢不浄 不増不減 」
2、「是故空中 ~~ 厭離一切顛倒夢想 究竟涅槃 」
3、「三世諸仏 依般若波羅蜜多 ~~ 菩提薩婆訶 般若心経」
と三つに分けて、各パートごとに何べんも繰り返してみましょう。読み慣れてくれば、最初から最後まですらすら読めるようになりますよ。どうぞ頑張ってください。
読経することの功徳
大丈夫です。あなたの感謝の念は必ずご先祖様に届いています。安心して下さい。そして、どうか悲しい気持ちにならないで。せっかく「ありがとう、嬉しいよ」とご先祖様が思っているのに、あなたが悲しんだらご先祖様も悲しみますよ。
参考までに、お経をあげる時の心持ちを書かせて頂きます。難しい文々を訳すので、上手く伝わると良いのですが……
「お経をあげるという事はこの上ない程の功徳を積むことである。諸々のお経の中に、沢山の金銀財宝や、それを超える程の宝を施すよりも、お経を一句一偈だけでも唱えることの功徳に勝りはしないと説かれている。読経をする時には、心を集中して、出しやすい声(音程)で、ハッキリと唱えるべし。そして、読経をしている時には、天龍八部四衆(仏様や神様、仏教によって救われた方々、仏教を信じる者を護る方々等)が、あなたの周りを囲んで、あなたのお経を聞いている。つまり、あなたが周りの方々に教えを説いていると思うべきである。そして、読経が終わった時には、あなたが読経をした功徳を、自分だけではなく、すべての生きとし生けるものに廻るように願い、いつか皆で共に成仏するように祈りなさい」
先師の説いた文言の一部を訳したものでございます。
どうぞ、これからもご精進下さい。
拝
「空」の智慧
蓮は美しいさま
般若心経の読経、誠に有り難く尊いことでございます。
般若心経は、仏教における智慧の重要な思想となる「空」を説くお経となっております。
シャーンタラクシタ大師の「中観荘厳論」の最後においては、『この「空性」の智慧を心に生起できれば、自ずと衆生を利益(りやく)すること(衆生の役に立つこと)ができる』と述べられておられるほどに「空」の理解を深めれば深める程に、それだけでも衆生を利益する功徳になるということであります。
そして、その功徳は、つまり、自分やご先祖さま、あるいは全ての衆生たちの悟りの糧にしていくことができるということでもあります。
ですので、「空」の智慧の要諦が説かれてある般若心経を読誦するだけでも、もちろんご先祖様への功徳となり、それはつまり感謝を表すものになると考えて頂いて良いかと思いますので、大丈夫です。
そして、できれば、更に般若心経の説かれてある「空」の智慧とは何かということについて、是非、学び理解して頂けましたら有り難いこととなります。
「空」の理解については、更に「縁起」という考え方も大切なものとなります。
是非、「縁起」についても理解をなさられて下さいませ。
また、できましたら読経された後に、読経による功徳を(皆へと)回向して頂けましたらと存じます。
普廻向
願わくは此の功徳を以て普く一切に及ぼし
我等と衆生と皆共に仏道を成ぜんことを
略三宝
十方三世一切仏 諸尊菩薩摩訶薩 摩訶般若波羅蜜
(じーほーさんしーいーしーふー しーそんぶーさーもーこーさー もーこーほーじゃーほーろーみー)
川口英俊 合掌
読経の第一目的は
書いて読むのではなく聞いて覚えるインド文化では、読経=暗記=勉強でした。暗記したテキストで頭の中で勉強するのです。
書いて読む中国では、読経の意味は法要で仏の徳を称える供養のセレモニーになりました。勉強のためには、書いてある経典を使います。暗記しなくてもいいので、経本を持って読経したりします。自然に暗記できるまで経本を持って読経すればよいでしょう。
それで、供養というセレモニーをやって、自分が良い気持になるでしょう。心が静まったり、仏様やご先祖と向き合った気になって高揚したりします。そういう善行為をして、最後に廻向文を読んで、その功徳を一切衆生に廻向します。般若心経みたいに廻向文とセットでないものは、別の廻向文を使うか、自分で「この功徳を先祖と一切衆生に廻向します」などと廻向します。廻向しなくても、自分の功徳にはなります。
ですから、読経の時は意味なんか考えず、心が平安になるように集中してください。読経が終わって、廻向したりしなかったり、普通の状態で、勉強したければしてください。
功徳廻向の起源や効能ややり方については、藤本晃『功徳はなぜ廻向できるの?』(国書刊行会)を宣伝します。
質問者からのお礼
皆さまご丁寧にご回答頂きありがとうございました。
YouTubeに合わせるのをやめて、自分のスピードで読んでみたら前よりもスムーズにお唱えすることができました。
初心者の私に丁寧に教えてくださりありがとうございます。空、縁起についてはまだまだ理解に程遠いですがら少しでもわかるようになれるよう日々精進いたします。
まわりのみなさんに功徳を回向できるように毎日少しずつですが、がんばります。
ありがとうございました
合掌
この質問から10ヶ月が経ちました。
毎日お唱えするのが難しい時もありますが、できる範囲で行っております。
おかげさまで、少しずつ覚えることができてきました。また、内容についても少しずつ勉強中です。
たくさんの知恵を頂きありがとうございました。改めてお礼申し上げます。