ペットの死について
他人のペットの死んだ話なんて、興味が湧かないかもしれませんが少しだけ聞いて下さると助かります。
つい最近、若うさぎが急逝しました。
麦という名前で、茶色の毛にお腹の部分は灰色で、鼻先や足先が黒くて、面白い毛色で、とても愛らしく思ったことです。抱き上げると、暫く茫然として、はっとして他の所に行きたがって蹴りつけてくるようなお転婆でしたが、家の中を走ってはずっと私や家族の周りをぐるぐる回って鼻先で足をつついて気を引くような愛らしいやつでした。まだ家に来て二年経っていませんでしたが、私と家族の日常の一部でした。
それが、つい昨日の早朝5時に死にました。
ケージを激しく引っ掻く音と、次いで悲鳴が聞こえて、離れた部屋に寝ていた私は目を覚ましました。うさぎは普段鳴きませんが、鼻を大きく鳴らして悲鳴を上げる事が稀にあります。
しかし、悲鳴は止まず、ケージを引っ掻く音がふっと消えた途端にのたうち回るような音がしました。
微かに両親が起き出した音がして、そして取り乱したような声が聞こえて、私は暗い部屋の中で急いで起きて、真っ暗な廊下に立ちました。悲鳴とばたばたという音を聞きながら、私は暗い廊下で自分の肩を抱いて薄暗いリビングを見ていました。母が溜息のような泣き声を上げ、近寄って小屋を覗き込むと、父が「死んじゃった…」と横で呟きました。麦はもう横たわって死んでいました。
まだたったの二歳でした。多分、夜中に突然内臓に何か発症して、あまりの痛みにショック死したのだと思います。うさぎは強い痛みを感じるとショック死してしまうのです。
死んでしまったものは戻ってこないのもよく知っています。もう麦が廊下を歩く私の後を追って走ってこないのも分かっています。
ですが、あの薄暗い中で、突然ケージを引っ掻いたのは、私たち家族を呼んでいたんです。痛くて助けを求めたんです。あの時そばにいればよかったとか、そういう事も思いましたが、どうする事も出来ないのは明白で、遣る瀬無い。
死んだ後はきっと楽しく過ごしていると信じていますが、あの薄暗い異様な空気の早朝と骨が折れる程暴れて悲鳴を上げる、あの愛らしいうさぎはまだ、記憶の中にいます。記憶の中で、悲鳴が聞こえます。死ぬ程の痛みの中で、家族を呼ぶ彼女を、どうか見守ってやるような救いを、祈って下さい。完全なエゴですが、どうか少しでも思いを馳せて下さると幸いです。
有り難し 42
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